2年目のゼミで、私が学生たちに考えてほしかったことは、正義と平和と戦争の関係についてでした。
特に、難しいのは、実は、正義と平和の関係です。私は、学年末に、以下のような課題を学生たちに出しました。
「正義」と「戦争」と「平和」の関係について熟考し、それについて論じなさい。論じ方については、以下の2つから選択すること。
1
この主題にかかわると考える事例を探し出し、それを材料にして論じなさい。
(1)
事例の説明は2000字程度。
(2)
それを基にした自分の論考は2000字程度。
2 「ジョセフ・コニー」について調べて、それを基にして、この主題について論じなさい。
(1)「ジョセフ・コニー」についての説明は2000字程度。
①「ジョセフ・コニー」が何をしたかに簡単に触れること。
②特に、最近(2006年以来)のICCとのやり取りに注目すること。
③ICC自体の内容に深入りしないように注意すること。
(2)それを基にした自分の論考は2000字程度。
ゼミ生21人のうち、「コニー」を論じた学生が9人いました。ゼミにおいては「コニー」の話は一度もしたことがなかったですから、「コニーって誰だ?」というのが学生たちの反応でしたが、半分近くのゼミ生が「コニー」を選んでレポートを書きました。私が練りに練って引っ張り出した課題がこれで、多くの学生がその意図を理解してくれました。「コニー」については次回詳しくお話をします。
「コニー」以外の主題を選んだ学生が提出した主題は以下のようなものでした。
アメリカによるイラク戦争(9・11後のフセインを対象とした戦争)を取り上げた学生が4人いました。また、「9・11以後」というタイトルで、アメリカのアフガニスタンとイラクへの戦争を論じた学生もいました。
80年代のイラン・イラク戦争、60年代のベトナム戦争、日本とアメリカの太平洋戦争、冷戦後のヨーロッパにおけるボスニア紛争、同じく、コソボ紛争(これらが戦争でなく紛争と呼ばれるのは内戦だったからです)、そして、「コニー」とも幾分関係があるのですが、スーダンにおける紛争をテーマとした学生もいました。最後に、少し変わったものとして、パキスタンにおける「ブット暗殺」をテーマとした学生がいました。
「コニー」を選んだ学生は、どちらかと言うと、正義と平和を中心に考え、それ以外の学生は、正義と戦争について考えたと分類できるかもしれません。
「コニー」のような具体的なテーマを私が学生に対して与えたのは、この年だけのことなのですが、それは、そうしなければ、正義と平和を中心に据えてテーマを設定する学生がほとんどいないのではないかと考えたからです。案の定、その他の学生は、正義と戦争をテーマの中心にしてレポートを書きました。ただ、毎年思うことですが、学生が選ぶテーマは、実に多様です。それらを見るだけでも世界には様々なことが起こっているのだと実感させられます。
次回は、「コニー」について論じます。
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柴田純志・著『ウェストファリアは終わらない』