2017年1月15日日曜日

第54回【1989 時代は角を曲がるか⑨】

11月」にゼミ生たちは以下のような記事を取り上げました。
「ソ連ボクサー6人 日本でプロに転向 『ペレストロイカ』ここまで」「SDIの削減確定 米大統領、法案に署名」「鄧氏、党軍事委主席を辞任 後継に江総書記」「夢に見た『西』 よぎる不安」「セクシュアルハラスメント 法廷の論戦火ぶた」「『共産党』改名を イタリア 党で提案」
この月の9日はベルリンの壁崩壊の日とされています。ゼミでは、これ以外の記事で、という指示をしました。とはいえ、それと関連のある記事が選ばれているようにも思えます。無関係なのは「セクハラ」くらいでしょうか。ゼミ生は、中国の政権交代も世界の激動の影響として報告をしました。

私は「ミニとロング 仲良く共存」という記事を取り上げました。ミニスカートの女性とロングスカートの女性が仲良く並んで歩いている写真に、「はっきりとした流行がなくなってきた」というコメントが付けられています。
芸術家、特に、ファッションやフィクションを専門とするデザイナーや小説家は、時代のカナリアと言ってもいい人たちです。言葉に出して説明はできなくても、時代の変化のにおいを嗅ぎ取り、時代の変化の風を感じて、それを作品に表現するのがこうした芸術家なのです。80年代は、明らかに、日本が変化した時代でした。それが、ファッションやテレビ・コマーシャルなどに端的に現れてきていたと思います。ファッションにおいては、70年代までの画一的な感じから多様化が顕著になりました。誰もがミニスカートをはいた時代とバラバラに好みの服を着る時代の変化です。それに伴って、生産様式も大量生産から多品種少量生産へと変化しました。そして、迎えたのがバブル経済だったのです。

テレビ・コマーシャルの変化は、お金の掛かったコマーシャルの登場人物のほとんどが外国人だった時代から、登場人物のすべてが日本人であるのに「カッコいい」コマーシャルへと変化したのが80年代だったと思います。コマーシャルには時代とその変化が深く刻印されているように思います。

いよいよ最後の「12月」、ゼミ生たちは以下のような記事を取り上げました。
「日本人狙われてます」「自衛隊 女性で“補強” 来春の採用、700人増へ」「東西融和で大幅上昇 今年の東証株価」「TV時評 肝心なところで及び腰」「『消費税廃止』参院で可決 衆院、きょう審議入り」「スーパードイツの誕生 『東方』と『通貨』が共鳴しパワー増大」

昭和天皇の崩御に始まり、ベルリンの壁の崩壊で幕を閉じた1989年でした。今振り返ってみても、1年にこれだけのことが起きた年はちょっと見当たりません。この年の最大の役者はゴルバチョフ、彼のひとつひとつの発言、行動が世界に多くの変化をもたらしました。ただ、変化の行方は、もちろん、まだ見通せませんでした。冷戦が終わったことで、世界はこれから平和になる、と多くの人びとは考えました。平和を実現すること、それはなかなか難しいもののようです。

12月」に私は、「東欧各国洗った大激流」という写真を一面にコラージュした記事を取り上げ、おまけにNTTの一面広告を取り上げました。NTTの広告は、自動車電話とショルダーホン(肩から掛けて運べる電話)と携帯電話が330,000台になり、いよいよ移動電話の時代がやってくるとし、サービスエリアを全国に広げるというものです。携帯電話が当たり前になった今の時代の学生たちにとっては、一度読んだだけでは何を言っているのか理解が難しい広告です。写真の携帯電話も虎屋の羊羹の箱並みに大きくて、一見それが何だか分からないようなものです。時代は大きく変化しました。この25年でもっとも変化したのは、通信・情報の分野ではないでしょうか。その出発が1989年だったように思います。


ゼミ生たちには、この1年を振り返って、「1989 世界は確かに曲がり角を曲がった、なぜならば・・・」の「・・・」の部分を埋めてみなさいというレポートを提出してもらいました。ゼミ生たちがどのような点に着目したか、次回ご報告致します。

※このブログは毎月15日、30日に更新されます。


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