2018年5月15日火曜日

第86回【20世紀の悪魔・民族自決⑥】

以上の理論的(かなり初歩的なものですが)な考察からわかることは、ミャンマーがASEANにおいて議長国を務めることを強く望んでいるのであるとすれば、民主化を真剣に考えざるを得ないし、議長国に決定するのが議長に実際に就任する3年近く前であることを考えれば、スタートした民主化は不可逆的であり、しかも、民主化の進展を証明する必要からそれは一気に進まざるを得ないはずだ、ということです。なかなか証明しにくいのですが、その根底には、国家の生理のようなものがあります。つまり、自国を取り巻く国際社会から認知してもらいたいという抜きがたい意識のことです。私は、今回のミャンマーの動きの初期にこれを強く感じたので、民主化は進む、後戻りはない、根拠はあると断言したわけです。

以上が、私の判断とその根拠でした。私の予想がはずれるようなことがあれば、それがはっきりした時点で、なぜうまく予想できなかったかを考えて、理論の修正をしなければならないと考えていましたが、どうもそれは必要ないようです。まもなく(確か今日)、スー・チー女史がノルウェーで20年以上遅れてのノーベル平和賞受賞の記念の演説を行うようです。ミャンマーの民主化はどうやら一線を超えて進展しつつあるようです。

物事、特に、複雑な事象を考える場合には、抽象的な理論を背景に持たなければなりません。そして、現実の動きの中で常にその理論を修正し鍛え上げなければなりません。ちょっとだけ種明かしをすると、私の今回の理論的枠組みは、学生時代に勉強したスイスの中立政策と小国の理論化、そして、非同盟の研究があります。これだけで10年の歳月勉強しました。いずれにしても、現実の事象にだけ目を奪われるのでなく、その背景に潜むパターンに注目しましょう。

脱線が長くなりましたが、国際政治の多くの事象を考えるヒントになればと思います。
次回より、2012年度のテーマを巡る議論をご報告致します。

※このブログは毎月15日、30日に更新されます。





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