2018年12月17日月曜日

第100回【ひとを殺す道具②】

2013年度のテーマは「ひとを殺す道具」。武器をテーマとします。
武器と言っても、できるだけ広い意味でこれを考えていきたいと思っています。銃はもちろん兵器ですが、ナイフだって兵器として使用できないわけではありません。銃にも様々な種類があります。もう少し大きくなると、ミサイルや飛行機、潜水艦、空母のような兵器もあります。また、馬や犬や鳩も兵器として用いられたことがあります。

直接的に兵器とは言えなくても、兵器の一部として無視できない機能を果たしている部品も重要かもしれません。ミサイルの先端部分に取り付けられているカメラや戦場で使用されているオフロード用の自動車だって立派な兵器の一部です。日本ではあまり取り上げられませんが、スペースシャトルで行われている実験の大半は軍事目的のはずです。

逆に、インターネットは軍事向けに作られたものが一般に普及して今ではなくてはならないものに発展しています。CDMAなどの携帯電話の技術も軍事目的で開発されたものです。つまり、軍事用の技術と民間向けの技術は今では広い範囲で共有されていて一線を画すことは非常に難しくなっています。これらのすべてを2013年度のテーマの範囲とします。

武器には、その武器そのものの効用(目的と言い換えてもいいですが)がまずあります。たとえば、地雷の中には次のようなものがあります。その地雷はひとを殺しません。片足を吹っ飛ばすだけ。片足を失った少年少女や大人の治療に、そして、その後のその人たちの生活に、社会は何らかの負担をしなければなりません。彼らは障碍者になってしまったのですから。社会に負担をわざわざ強いることが目的の地雷ということになります。だからわざと人が死なないように作られている地雷なのです。こういう武器の効用を調べます。

また、武器の開発には様々な局面があります。こうしたプロセスに特色があればそれを調べるのも面白いはずです。民間で開発された技術が重要な武器に使用される過程などがこれに当たります。たとえば、ステルス戦闘機。レーダーではその存在が読み取れない飛行機ですが、この飛行機には特殊な塗料が塗られています。その塗料は、日本の会社が、テレビの電波を吸収して跳ね返さない塗料として開発してビルなどに塗って使用するはずでした。レーダーは飛ばした電波の跳ね返りを読み取るものなので電波が跳ね返らないで吸収されると読み取りは不可能になります。これを飛行機に塗ればレーダーに捕捉されない、つまり見えない戦闘機が作れると考えたのはアメリカ人で、日本人の開発者には想像もつかないことでした。こうした民需と軍需の相互乗り入れもテーマになります。

あるいは、映画「戦火の馬」でも描かれているように、馬は戦争の重要な一部でした。第1次大戦を境にそれは戦車に取って代わられることになりました。なぜ戦車が登場したかといえば、機関銃の登場が欠かせません。機関銃の登場、鉄条網と塹壕での戦い、これが馬を戦場において無用の長物にしたのです。馬にとってはラッキーですが。こういう移り変わりもテーマになります。


以上のような、武器(ひとを殺す道具)をめぐる様々には無数のテーマが隠れています。それらを発掘して、そのうちのひとつを自分のテーマとして掘り下げるのが2013年度の柴田ゼミとなります。そうした考察から現代の国際政治を捉え直し、21世紀の未来の世界を思い描いてみたいと思っています。

※このブログは毎月15日、30日に更新されます。


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