2020年4月15日水曜日

第131回【ロシアの生理④】

2016年度は、現状変革国の代表のひとつ、ロシアを対象としますが、その理由は、冷戦時代の現状変革国の親分であるソ連の中核をなしていたロシアが、現在、何を考え何をするかは依然として重要であると考えられるからです。ロシアは、明らかに、自分たちは他の諸国とは違うと考えているように見えます。つまり、強烈な大国意識が今も健在です。ロシアが目指す国際社会とはどういう姿でしょうか。そして、その源泉には何が存在しているのでしょうか。たぶん、それは、帝政ロシア、ソ連、そして、今のロシアにおいても変わらない何かなのではないでしょうか。そして、ロシアに言えることは、他の多くの諸国にもまた言えることと考えられます。同じやり方で、イランやトルコやインドネシアの奥底にあるものにも触れることができるのではないでしょうか。

2016年度は、ロシアを取り上げますが、以下、私は「2つの仮説」を採用します。それについて説明をします。

1 
ひとつの国家は、あたかもそれが一人の人間であるかのように考え行動すると仮定します。それ故、ロシアの記憶(歴史)がロシアを形作っていますし、現在の思考と行動に大きな影響を及ぼしています。アメリカや日本がそうであるように、ロシアも過去の記憶が現在のロシアを形作っていますし、国際社会との関係に大きな影響を及ぼしています。一人の人間に精神分析をするように、同じ手法で国家についても精神分析的な解釈が適用できるはずです。

2 
人も国家も、内面の拘束から逃れることはできず、外に現れる行動から遡って必ず内面に到達することが可能です。それ故、実は、心の中で何を考えているかを実際に聞きださなくても、分厚く行動を観察すれば、その人や国家の内面を伺うことが可能となります。

今年のゼミの到達点は、多様なロシアの国際社会での行動の源泉に何があるかということを知ることです。それに到達するために、プーチン時代のロシアの国際社会での行動を「虫の目」で眺めることにします。それらを繋ぎ合わせて解釈を加えることで、最初の一滴(ひとしずく)に到達したいというのが今年度の野心です。

以下、どのように「虫の目」を持つかの方法を述べます。

1 
新聞の縮刷版で、ロシアに関する記事を徹底的にフォローします。プーチンの登場からスタートします。たとえば、2000年の12ヶ月を12人で1ヶ月ずつ分担し、ゼミで報告します。新聞は『読売』を使用します。理由は出版数が1番だからです。他意はありません。

2 
新聞で「事実」に近いものをフォローするのと同時に、ロシアを専門とする研究者がロシアの行動をどのように解釈しているかを知る必要があります。月間の総合雑誌で取り上げられたロシアに関する言説をフォローし、ロシアの行動の理解に利用します。総合雑誌には、以下のようなものがあります。世界、中央公論、文芸春秋、VOICEThis is 読売、諸君、論座、WILL、正論。新聞の12ヶ月を担当する12人以外の人は、これら総合雑誌をサーベイして報告します。

繰り返し論じている通り、2016年度は、ロシアの対外行動を観察し、それに対する言説を参照することで、ロシアの行動の源泉に迫るのが目標です。
それに伴って、国際社会の変化や変化の見通しなどにも気付かされるかもしれません。しかし、そうしたことは、あくまでも副産物に過ぎません。

※このブログは毎月15日、30日に更新されます。



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