2020年6月19日金曜日

第135回【ロシアの生理⑧】

2016年度は、私にとって、学習院での最後の1年間でした。ゼミの最後の総括の講義は、学習院での22年間の授業と11年間のゼミのまさに最後の講義となったわけです。
私は「ロシアの生理と病理」と題して、以下のように、2016年度の総括の講義を行いました。

2016年度のテーマは「ロシアの生理」でした。
実は、このテーマを思いついたのは3年前のことでした。どうにもロシアが気になる、そんな感じがしたのです。理由はよくわかりません。もしかしたら私がこの20年間ポーランドに滞在する機会が多かったからかもしれませんが、それならば、なぜもっと早くからそれを思わなかったのか不思議です。ただ、国際政治について真面目に考えれば考えるほど、ロシアの重要性について一度真剣に考えてみなくてはと思うようになったのです。

2002年に私はダブリンに滞在していました。そこには、EUの各国から勉強に来ている社会人がたくさんいて、フランス、イタリア、ベルギー、スペイン、ドイツ、チェコなどからの留学生(と言っても、皆社会人)と親しくなりました。加えて、ロシア人やベラルーシ人もその中にいました。ある時、カフェで皆でお茶をしていた時に、イタリアの軍人(彼はPKOでコソボにも行っていたのですが)が「ロシアもEUに入ればいいのに」と言ったのです。その時のロシア人(弁護士、女性)の反応が忘れられません。彼女は普段、過激な発言をする人ではまったくありませんでしたが、その時には、「何を言っているのか!ロシアがEUを飲み込んでやる」と真剣に言ったのです。非EUの人間は、その時、そのロシア人以外は私一人だったのですが、「そうでしょ、JUNJI」と言われて、少し呆然としながら「そうかもねえ」と答えました。

ロシアは、EUとは対等でも、その加盟国のone of themになろうとはこれっぽっちも考えていないということを私はその時痛感しました。「ああ、ロシアは本物の大国なのだ」と初めて心から思いました。単なる私の個人的なエピソードに過ぎないわけですが、たぶん、この感じには普遍性があるように私には思えます。ロシアとは何でしょうか。

※このブログは毎月15日、30日に更新されます。




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