2020年3月2日月曜日

第128回【ロシアの生理①】

2016年度は、22年間に渡って行ってきた学習院での授業の最後の年となりました。最後だからと言って何か特別なものを取り上げるのではなく、例年通り、私の興味関心からテーマを設定しました。

2016年度、柴田ゼミ最後のテーマは「ロシアの生理」でした。ゼミ生には、年度初めに、このテーマについて以下のような話をしました。

そもそも国家というものには、それぞれ性格があります。たとえば、ポーランドが蛮勇を奮う国だとすれば、チェコが臆病な国であるというように。こうした性格付けは必ずしも正しくはないわけですが、しかし、一面の真理を表してもいます。つまり、やはり、国家には一定の性格、あるいは、行動における傾向が存在しているのです。

人間の性格を形作っているのがmemoryであるとすれば、国家の性格を決めるものは歴史であると考えられます(このあたり、ぜひ『ウェストファリアは終わらない』をお読み下さい)。もちろん、もっと遡って、人間においてDNAを問題にすることも可能です。人間におけるDNAに当たるものは国家においては何でしょうか。国家においては、それでもやはり歴史こそがDNAに相当するものであるような気がします。国家にとって歴史はそれほどに重要なのです。

とはいえ、今年度は、ロシアの歴史を勉強するわけではありません。ロシアの表面に現れる行動からその内面を垣間見るのが今年の目標です。

国際政治にとって、ロシアは極めて重要な国家です。アメリカが最重要であることは間違いのないところですが、台頭著しい中国に劣らず、国際政治に多大の影響を与え続けているのがロシアです。

言うまでもなく、ロシアは旧ソ連であり、冷戦時代の東側陣営の雄でした。東側諸国を完全に制圧し、共産主義のイデオロギーを掲げ、それを世界中に広めることを使命としていました。冷戦終焉と同時にソ連は十数カ国に分裂し、ソ連の内政・外交を継承したのがロシアです。人口は半分になり、国土も小さくなりました。多民族国家だったソ連は、分裂して相当にスケールダウンしましたが、それでもなおロシアは多民族国家です。

腐っても鯛、と言いますが、ロシアこそまさにそれ、今でも冷戦時代と同様に国際政治で重要な位置を占めています。もちろん、パワーという観点から見れば、ロシアは衰えました。しかし、自国が他とは異なる大国であると信じる大国意識を持ち続けている点で、明らかにロシアは今も昔と同様に大国であり、大国として国際社会で行動をし続けています。
ひとつひとつに触れることはしませんが(それをやるのが今年のテーマです)、ロシアは現在も国際政治上で多様な行動をしていますが、その背景の一番奥底に潜んでいるのは、いったい何でしょうか。それに触れるのが今年の目標になります。

※このブログは毎月15日、30日に更新されます。

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