2020年3月17日火曜日

第129回【ロシアの生理②】

年度初めにゼミ生にしたこの年度のテーマの設定についての話を続けます。

今年度(2016年度)は、1年という限界の中ですので、プーチン時代を対象として取り上げます。プーチンはエリツィンに引き立てられて登場したわけですが、エリツィンが傾けたロシアを、良くも悪くも引き締めて立て直しました。だから、プーチンの前のエリツィンの時代との比較が重要になるのですが、そこまで遡る時間はたぶんないと思います。また、エリツィンの前には、それをまったく意図していなかったのだとしても、冷戦を終わらせ、ソ連を分裂の方向に持っていったゴルバチョフがいます。彼こそ、冷戦の終焉の最大の功労者であると思いますが、もちろん、そこまで遡ることはできません。1年のゼミでは無理と思います。

ゴルバチョフが登場したのが1985年のことですが、スターリン以後の30年も勉強できたらどんなにいいかと思います。西側に一気に追いつくかと思われた時期もありましたが、そうはならずに停滞し、結局はゴルバチョフの改革に到達するわけですが、この時代もたぶん重要だと思います。

考えてみれば当たり前のことですが、1917年のロシア革命以後のソ連の歴史すべてが、今年度の勉強にとっては、実は、必要であるのです。レーニンを経てスターリンへ。その間、西側諸国の革命への干渉あり、ナチスのソ連侵略に始まる第2次大戦ありです。

現在のロシアは、たぶん、70年余りに渡る共産主義ソ連の濃厚な影響を受けているものと思います。今もまだ指導者のほとんどはそうした共産主義の文化の下で生きた人たちです。しかし、さらに遡って、帝政ロシア時代から引き継いだDNAが現在のロシアにないかと言えば、それは脈々と生き続けているのだと思います。それは、私たち人間のDNAに、生物の進化の刻印があるのと同じだと思います。そうした古い古い、思い出そうとしても思い出せない、自分個人の経験を超えた記憶・memoryが現在の私たちを拘束しているように、長い長いロシアの歴史が、今のロシアを拘束しているに違いないのです。それは何か、を私は知りたい。

2016年度は、プーチン時代のロシアの国際政治上での様々な動きを新聞などで追いかけながら、その背後にある、変わっても変わっても変わらないロシアの核に触れてみたいと考えています。

以前、アメリカと日本を論じて、どちらも病んでいるのだと言ったことがあります。たぶん、ロシアも病んでいることは間違いない。アメリカが脅迫神経症を、日本が自我の分裂症を患っていると診断したのですが、果たして、ロシアは。私なりの診断は、もちろん、ありますが、それは1年の勉強で大きく変化するかもしれませんし、変化しないかもしれない。1年後に報告をしますので、それまで楽しみに待っていて下さい。

それにしても、柴田ゼミの最後のテーマがロシアとは!

※このブログは毎月15日、30日に更新されます。

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